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過熱する中古マンション価格のトレンドはこう作られる!市場を動かすのは誰?

 
東日本不動産流通機構が発表したレポートによると、2025年2月の首都圏(一都三県)の中古マンションの新規売出価格が、過去に類を見ないほど大きく高騰いたしました。マンションリサーチ株式会社では、高騰の背後にある原因を紐解いてみました。
※本調査において、都心5区は『千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区』を指します。
 

グラフ1:東日本不動産流通機構レインズタワー月例レポート
 

引用:東日本不動産流通機構レインズタワー月例レポート

 
グラフ1は首都圏中古マンションの成約、新規登録、在庫㎡単価の推移を表しています。成約㎡単価は前月から減少したものの、新規登録㎡単価は引き続き右肩上がりで上昇し、2025年2月には過去に類を見ないほどの高水準に達しました。
 

グラフ2:東京都23区中古マンション:一般向けマンションの成約坪単価と新規売出坪単価推移
 

出典:福嶋総研

 

グラフ2は、東京都23区内の一般向けマンション(9,000万円未満)の成約坪単価と新規登録坪単価の推移を示しています。グラフ1とは対照的に、成約坪単価も新規登録坪単価も大きく乖離することなく、またほぼ横ばいで推移しています。

 

グラフ3:東京都23区中古マンション:富裕層向けマンションの成約坪単価と新規売出坪単価推移
 

出典:福嶋総研

 

グラフ3は東京都23区の富裕層向けマンション(9,000万円以上)のマンションの成約・新規登録坪単価の推移を表しています。成約坪単価を見ると、グラフ1と同じ推移をしている一方で、新規登録坪単価は常に成約価格を上回っており、乖離が拡大しております。これらのことを総合すると成約単価は、富裕層向けマンションのトレンドに則っており、新規登録単価の高騰も富裕層向けマンションの新規登録単価に引っ張られていることが分かります。つまり、富裕層向けマンションという局所的な要素が、「首都圏マンション価格が高騰している」ように見せています
 

グラフ4:東京都23区中古マンション:売出時9,000万円以上築年帯別新規売出割合


 

出典:福嶋総研

 

グラフ4は、東京都23区の富裕層向けマンションにおける築年帯別の新規売出件数の割合を示しています。2006年以降築のマンションが7割を占めており、比較的築年が浅くかつ高価格帯のマンション価格が高騰していると言えます。
 

グラフ5:東京都23区:年次別 新築マンション竣工棟数
 

出典:福嶋総研

 

グラフ5では東京都23区の新築マンション竣工棟数の推移を表しています。2000年を天井に減少し続け、現在に至ります。一方で、新築マンションの需要は依然として強いものの、供給が不足しているため、その代替として築年の浅い富裕層向けマンションに対する需要が高まっていると考えられます。
 

グラフ6:シティタワー麻布十番:成約坪単価時系列推移
 

出典:福嶋総研

 

グラフ6では、東京都港区のシティタワー麻布十番の成約坪単価の時系列推移を表しており、赤い点線は近似曲線を表しています。通常、この近似曲線の周辺に沿う形で中古マンション価格は形成されるのですが、特に都心部富裕層向けマンションは、グラフ6のように近似曲線を大きく上振れながら価格形成が行われている事例が散見されます。
 

中古マンションは、直近の成約事例にトレンドを加味した期待値を上乗せした価格で一番最初に売り出されます(一般的にチャレンジ価格と呼ばれます)。富裕層向けマンションではこのチャレンジ価格で成約する事が多い為、グラフ6のような推移が形成されます。そしてこの成約坪単価を参考にすることでさらにチャレンジ価格が引き上げられるため、冒頭で記述したグラフ1のようなトレンドが形成されます。
 

筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社

データ事業開発室

不動産データ分析責任者

福嶋総研

代表研究員

早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、

建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。

福嶋総研発信リンク集

https://lit.link/fukushimasouken

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