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「金利を甘く見るな!」リート市場が発する実需マンション市場への警戒

金利上昇がもたらすマンション市場の変容についての分析

 

本調査リリースのまとめ
 
東証リート指数は、長期金利が上昇したことの影響で、その価格を下げました。昨今「金利のある世界」と言われるようになりましたが、住宅ローン金利負担の影響が消費者に直結する今後、中古マンション価格も楽観的に見ることできないでしょう。

 

トランプ政権はアメリカファーストを実現するため、今後日本には円高誘導の圧力がかかり、利上げが行われることは想像するに難くありません。加えて、日銀の植田総裁は「ゼロ金利制約を避ける政策運営」を重視しているため、金利上昇圧力はより強まる事が予想されます。実際に日銀では1月24日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%から0.5%へ引き上げることを決定しました。また2025年度末を目途に最低でも1%を目指して利上げを行う姿勢は変わらないようです。従って、住宅ローン金利も上昇していくと予想される中、都心中古マンション市場はどのようになるのでしょうか。
 

1:金利の上昇はマンション価格を押し下げる?

以下のグラフ1では東京都23区の、9000万円以下の中古マンションの成約坪単価の推移を示しています。
 

出典:福嶋総研

 
東京都23区内の大部分を占める9000万円以下の中古マンション(一般消費者層向けマンション)の、成約坪単価の推移は、2024年以降横ばいもしくは下降傾向が見られます。この事は、高騰し過ぎた中古マンション価格が、消費者にとって既に限界に達している事を示しています。更に、ここにきて住宅ローン金利が上昇すれば、その分家計負担も大きくなり、購入需要が減少する為、中古マンション価格を下げざるを得なくなると筆者は考えます。
 

2:リートにみる金利上昇の影響

■2-1:日経平均とリート指数
以下のグラフ2では東証リート指数と日経平均の動きを表しています。
 

出典:investment.comのデータ参考に福嶋総研が加工

 

日経平均も東証リート指数も2022年までは、大きさの強弱はあるものの、同じ方向に連動して推移してきました。しかしそれ以降は、日経平均は高騰、東証リート指数は下落と相互に異なった方向に推移しています。
 

■2-2:リート指数が下落した原因
リート指数が下落した最大の原因として考えられるのが2022年以降の長期金利の上昇です。特に10年物国債の利回りが上昇したことが、リート価格に大きな影響を与えました。長期金利の上昇は、国債や債券の利回りを魅力的にし、相対的に配当利回りが重要視されるリートは、投資家の間で売り圧力が高まりました。また、リート組成する為の借入コストが増加したため、投資家への魅力が低下した結果としてリート市場は売りに押され、価格が下落しました。
 

3:リート市場から実需マンション市場への警告

日本人の多くが変動金利型の住宅ローンを組んでおり、ほぼゼロ金利だったと言えます。一方で今後住宅ローン金利の上昇が見込まれ、すでに「金利のある世界」へと変わりました。リート市場は不動産のプロのマーケットであり、実需市場を先行的に示すものであるともいえます。この市場に価格下落という大きな影響が、個人消費者にも降りかかってくると考えれば、今後の中古マンション価格も楽観的に見る事は出来ないでしょう。
 

筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社

データ事業開発室

不動産データ分析責任者

福嶋総研

代表研究員

早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、

建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。

福嶋総研発信リンク集

https://lit.link/fukushimasouken

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