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【中古マンション】管理費が高い中古マンションは高く売れるのか?管理費の実態を紐解く

リセールバリューを考えるなら、「管理の質」を注視

福嶋総研 

昨今の物価高に伴い、メンテナンスなどにかかる人件費が高騰したことにより、新築マンションの管理費も値上がりしているといいます。今回は管理の視点で、中古マンション市況をふまえその実態をマンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)が調査しました。

集計期間:2011年1月~2024年10月

調査対象:エリア/全国・(一部東京都) 種別/実需マンション

調査機関:マンションリサーチ株式会社

調査方法:期間内の中古マンション売出事例を調査

まとめ

昨今の物価高騰などによる、管理コストは高騰しています。一方で、中古マンションの管理費は据え置きに近い状態で推移しています。この事は、管理の「質」を落として現状の価格を維持しているとも考えられます。一方でリセールバリューは管理の「質」との相関性が見られるため、「質」と「価格」のバランスを今一度見直すことが非常に重要です。

高騰し続ける新築マンション管理費

グラフ1:大手ディベロッパー関連管理会社平均管理費㎡単価の推移

出典:福嶋総研 

グラフ1では三井不動産、住友不動産、三菱地所レジデンスの関連管理会社の新築マンションの平均管理費㎡単価の推移を示しています。ややばらつきがあるものの2016年以降はいずれの管理会社も単価の上昇が見られます。

グラフ2:東京都23区新築マンション棟数推移

出典:福嶋総研 

グラフ2では東京都23区内の新築マンション竣工棟数の推移を示しています。2002年以降、新築竣工棟数は減少を続けています。このことは管理会社の新規の管理業務のパイが限界をむかえることを意味しています。従って、管理会社として収益を確保するためには、既存の中古マンションの管理業務を新規受注する又は、新築・中古マンションの管理業務を高く請け負う必要があります。(特に新築マンションに関しては高単価にしやすい傾向です。)

中古マンション管理費の推移

表1:東京都23区の代表的なマンションの時期別の管理費の比較

出典:福嶋総研 

上記の表1では東京都の代表的な中古マンションをランダムにピックアップし、2011年と直近の管理費㎡坪単価を比較しました。いずれの物件も0%~5%と多少の変動はあるものの、大きな変動はないようです。
表2:東京都23区の管理会社が変わっていない中古マンションの管理費の変化

出典:福嶋総研 

表2では、2011年以降管理会社が変わっていない中古マンションの、2011年と直近の管理費㎡坪単価を比較し、その変化率が調査対象の中古マンション全体のどの程度の割合かを調べました。1%未満が67%、1%~10%未満が24%、10%以上が9%と9割が10%未満の変化しか見られませんでした。

表3:東京都23区の管理会社を変えた中古マンションの管理費の変化

出典:福嶋総研 

表3では、2011年から現在までに管理会社を変えた中古マンションの2011年と直近の管理費㎡単価を比較し、その変化率が調査対象の中古マンション全体のどの程度の割合かを調べました。1%未満の物が81%、1%~10%未満が14%、10%以上が5%と10%未満が95%となり管理会社を変えた方が、以前の単価よりも変化がないという結果になりました。

上記の結果から、冒頭で述べた「物価高に伴い、メンテナンスなどにかかる人件費が高騰」という事実を考慮すると、管理会社を変える・変えない関係なく単価が変わらないということは、サービスの「質」を下げて価格を一定に保つということが恒常的に行われていると考えられます。しかし、管理の「質」は、マンションのリセールバリューに影響を及ぼします。

マンション管理適格評価が高いマンションはリセールバリューも高い

表4:東京都23区の管理会社を変えた中古マンションの管理費の変化

出典:福嶋総研、マンション管理適格評価(https://www.kanrikyo.or.jp/evaluation/) 

表4では、マンション管理適格評価(https://www.kanrikyo.or.jp/evaluation/)と価格が上がったマンションの割合と平均高騰率(2023年対2022年比)を表しています。評価点が高い(★が多い)程、価格が上がったマンションの割合も、平均高騰率も高くなる傾向にあります。

従って前項で述べたように、「質」より「単価」は将来的なリセールバリューを損なう可能性が高いことを示唆しています。

筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)

マンションリサーチ株式会社

データ事業開発室

不動産データ分析責任者

福嶋総研

代表研究員

早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、

建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。

福嶋総研発信リンク集

https://lit.link/fukushimasouken

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