News
2024年10月、住宅ローン金利上昇の兆し ~変動金利と固定金利の動向を分析~
住宅ローン市場は「金利のある時代」へと回帰
マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査により、住宅ローン金利の推移を予測しました。
グラフ1:DH住宅ローン指数の推移
■変動金利について
2024年10月、住宅ローン市場は「金利のある時代」へと回帰し、多くの銀行が変動金利を引き上げました。金利を据え置いた銀行も一部ありましたが、大半が引き上げに踏み切ったため、市場全体として金利上昇が鮮明になった月といえるでしょう。
(グラフ1に示す通り)今月は、DH住宅ローン指数の変動金利は、0.615%と前月の0.610%から0.005%の上昇となりました。また1年前の変動金利が0.482%であったことから、金利上昇をはっきり感じられるでしょう。
注目すべきは、他の銀行が金利を上げる中で、りそな銀行が一部条件付きで金利を引き下げた点です。りそな銀行は10月に0.15%引き上げたものの、11月には0.1%引き下げ、変動金利を0.39%と「0.4%」を下回る水準に抑えました。これより低い金利を提供しているのは、auじぶん銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行の3行のみです。
日銀の植田総裁は10月末の会見で「経済・物価見通しが現状の予測通りなら、政策金利を引き上げていく」と発言しました。このため、今後の利上げのタイミングに注目が集まり、変動金利がさらに上昇する可能性が示唆されています。
■10年固定金利について
固定金利選択型の内、10年固定を中核に据えている銀行は少なくなく、銀行によっては取引量を増やすため、戦略的に金利を引き下げることがあります。大手銀行やネット銀行は、固定金利のバリエーションは豊富ですが、地方銀行や信用金庫などは10年固定が、固定金利の最長期間となっていて、固定金利というと10年固定を指す場合もあるほどです。
10年固定金利は、日本国債10年物の金利を基に設定されていると言われています。10月には、米国の景気が底堅く推移し、米長期金利が上昇した影響で、国内金利も一時1%近くまで上昇しましたが、その後は落ち着きを見せました。
(グラフ1に示す通り)今月のDH住宅ローン指数(10年固定)は1.342%となり、前月の1.299%から上昇しました。10年国債の金利上昇に伴い、ウォッチしている13行すべてが金利を引き上げましたが、上昇幅の違いにより順位に多少の変動があったものの、上位3行は変わりませんでした。
米国大統領選の結果を受け、円安が進行しはじめていて、為替の介入の効果も限定的であることから、再び日銀が利上げする可能性が高まってきたと考えています。これからジリジリと金利が切りあがっていき、10年国債の1%オーバーもあると見ているので、10年固定金利は一段と上がっていくことが予想されます。
■全期間固定金利について
全期間固定金利は、変動金利の相対的な割高感から敬遠されてきました。一方で変動金利の上昇が始まったので、全期間固定金利を検討する人が増えているように感じていますが、変動金利との金利差が大きいことから、いまだ変動金利を選択する人が多数派のようです。今後は変動金利よりも固定金利の上昇が早く、かつ上昇幅も大きいと予想されるため、金利が上がる前に固定金利を利用するのが望ましいでしょう。全期間固定金利は、日本国債10年物だけでなく超長期国債などの動向も参考に設定されているといわれています。10月は、すべての固定期間の金利が一斉に上昇しました。(グラフ1に示す通り)今月は、DH住宅ローン指数の全期間固定金利は2.029%と前月の1.946%よりも上昇しました。またウォッチしている15行の内、フラット35を含む14行が金利を引き上げました。また、フラット35(買取型)の基準金利は1.84%となっていますが、中国銀行1.2%、百十四銀行1.3%、常陽銀行1.46%、関西みらい銀行1.59%と、地方銀行が相変わらず頑張っているので、全期間固定金利を検討している人は、取り扱い金融機関を細かくチェックするのがよいでしょう。今後の全期間固定金利は、10年固定金利と同様のポイントが注目されます。超長期金利は昨今、上限に近づいているため、上昇が一服する可能性もありますが、米国の景気や為替の影響次第ではさらに上昇するかもしれません。従って日本経済以外の要因で金利が動く、予測困難な局面に差し掛かっています。
調査リリース担当者プロフィール
福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。
福嶋総研発信リンク集
https://lit.link/fukushimasouken
リリース本文へ(PRTIMES)