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【2025年4月住宅ローン金利と中古マンション市場】変動金利大幅上昇の影響か?中古マンション「販売中」売主が強気からやや軟化
マンションリサーチ株式会社(東京都千代田区神田美土代町5-2)はホームローンドクター株式会社(東京都中央区八丁堀2-19-6)代表取締役 淡河範明(おごう のりあき)氏への聞き取り調査による住宅ローン金利の推移の予測と、マンションリサーチ株式会社保有データを用いて中古マンション市場の現況について調査しました。
グラフ1:DH住宅ローン指数の推移

以下のグラフ2では東京都23区の一般向け中古マンションの「販売日数」と「値下げの回数」の推移を示しており、販売日数が長いほど購入需要が弱いことを示し、値下げの回数が少ないほど売却姿勢が強気であることを示します。
グラフ2:東京都23区一般向け中古マンション:販売日数と値下げ回数

中古マンションの販売期間は短期化したものの、住宅ローン変動金利が大きく上昇したことが影響したのか、「値下げ回数」が増加すなわち売主の強気姿勢が軟化したことが見て取れます。新規登録価格は大幅に高騰し、売出はじめたばかりの売主はまだまだ強気ですが、一定期間以上在庫化している売主は、値下げをしやすくなっていることが想定されます。
2025年4月は、今年の1月の利上げがようやく基準金利に反映された銀行が多く、大幅に上昇することとなりました。
グラフ3:DH住宅ローン指数の推移(変動金利)

今月は、DH住宅ローン指数の変動金利は、0.828%と前月の0.652%から約0.176%上昇しました。1年前の0.482%なので、引き続き金利上昇の局面にあります。
前月は、金利を上げた銀行が11社でしたが、今月は金利を変更しなかったのはSBI新生銀行、ソニー銀行、イオン銀行の3社もありました。先月まで記述してきた通り、今月は多くの銀行が基準金利を0.25%程度上げました。
みずほ銀行は、昨年9月に金利を更改しなかったため今回は基準金利を大きく引き上げることが予想されていましたが、基準金利、適用金利ともに0.15%しかあげませんでした。政策金利は0.5~0.6%上昇してきたのに、大きく異なる上げ幅には注目すべきです。
三井住友銀行は、表面金利が0.78%、0.925%と他の金融機関と比べて引き上げ幅が大きかった点が目につきました。特に三井住友銀行は、前述の金利は新規取引のものですが、借り換えは1.025%と変動金利が1%を超え、金利上昇の本格化を感じさせる動きとなりました。
【変動金利の今後の動向】
日銀の追加利上げの動きは、トランプ関税ショックで、世界中の経済が混乱したことから、当面は日銀も利上げには慎重姿勢に転じるでしょう。世界経済や日本経済動向次第にはなりますが、金利は狭いレンジで推移するものと見ています。
【10年固定金利の現況】
固定金利選択型の内、10年固定を中核に据えている銀行は少なくありません。ただ、10年が最長の固定金利となる銀行はともかく、全期間固定金利を有する銀行は、10年固定を積極的にとりたい意欲はないようです。
10年固定金利は、日本国債10年物の金利を参考に設定されていると言われています。
3月の国内の債券金利は、順調に伸びを見せた賃金を受けて長期金利は上昇傾向となり、先月末1.378%だった利回りが16年ぶりに1.5%を超えました。月末近くに米国長期金利が低下し、日本の長期金利が低下することとなり、1.497%で引きました。
グラフ4:DH住宅ローン指数の推移(10年固定金利)

今月は、DH住宅ローン指数の10年固定は1.722%と前月の1.551%と大きく上昇、1年前の1.208%よりも上昇しています。10年国債の上昇に呼応したのか、ウォッチしている13社中12社が金利を上昇させ、三井住友銀行のみ金利を引き下げました。また、10年固定の金利が2%を超えた銀行が13社中7社と、とうとう半分を超えました。このまま勢いがつくかと思いきや、トランプショックにより株式市場や金利が大きく下がったため、来月の10年固定金利は大きく下がると予想しています。
【10年固定金利の今後の動向】
これからはトランプショックによる影響を見極めることが、金利動向の鍵となりそうです。目先金利は大きく下がり、一定のレンジで推移するものと見られます。
【全期間固定金利の現況】
全期間固定金利は、変動金利との相対的な割高感から敬遠されています。変動金利の上昇が始まり、全期間固定金利を選ぶ人が徐々に増えていると聞いていますが、いまだ変動金利を選択する人が多数派のようです。これからは、悩んだ結果ミックスプランを選択する人も増えていくことでしょう。
全期間固定金利は、日本国債10年物だけでなく超長期国債などの動向も参考に設定されているといわれています。3月は、すべての固定期間の金利は上昇することとなりました。
グラフ5:DH住宅ローン指数の推移(変動金利と全期間固定金利)

今月は、DH住宅ローン指数の全期間固定金利は2.316%と前月の2.253%よりも上昇し、国内金利の上昇をそのまま反映しているようです。1年前の1.896%からずっと上昇が続いていて、引き続き上昇トレンドにあるとの認識です。
ここ何カ月も全期間固定の最有力候補であるフラット35ですが、今月は買取型の基準金利を1.94%に据え置いたことで、ますます魅力的な金利になったといえます。フラット35以外の全期間固定金利はすべて2%を超え、ソニー銀行は3%を超えていることから、金利上昇はかなり進行しているといえるでしょう。
【全期間固定金利の今後の動向】
今後について、全期間固定金利は、10年固定金利と同じポイントが注目されます。10年固定と同じく、金利が低下傾向に転じ、レンジ内での動きになると予想しています。当面は、トランプショックの影響の見極めとなるでしょう。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。
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